かえるくんごめん...浮気してしまいました。
しかし、日銀が何をしているかを追っていて、「高校生レベル」でわかりやすく解説してくれる人たちがほしいです。もしこの罠が長期で離れないなら、そして10年先を見すえるなら、必要だと思います。彼らのためにも。
コメントと助言をいただいた night_in_tunisia さんに感謝。
原文は FT誌の 「Japanese MP group to seek inflation target」。
13 Apr 2010 12:00am
日本の議員たちがインフレーションターゲットを求めている。[1]
By Mure Dickie in Tokyo
与党、民主党に属する 130 人ほどの国会議員が、日本銀行に対してイギリス式の明確なインフレーション・ターゲットを課す要求案の準備をすすめている。
これは、最近になって民主党議員が結成した "デフレ脱却議員連盟"[2] によるものだ。日本経済は物価の下落に苦しんでいるが、それに対する中央銀行の腰は重い。この動きによって、与党にひろまっている不満が浮き彫りになったといえよう。
日本のメディアが伝えるところによると、彼らは火曜日の会見[3] で、インフレーション・ターゲットの実施を正式なものとして政策案に取りいれるよう訴えたとのことである。7月に予定されている参議院選挙は民主党にとって非常に重要なものとなりそうなので、デフレ脱却議員連盟は、そのマニフェストにインフレーション・ターゲットを盛りこみたいのだ。
この民主党議員グループの動きによって、日本銀行が新しい緩和政策の実施を強いられると市場は考えるようにはなるだろう。日銀は自らのデフレーションに対する姿勢を、それに疑いを抱いている人たちに納得してもらわなければならないからだ。とはいうものの、中央銀行には公式には独立性というものがある。民主党幹部が、日銀にインフレーション・ターゲットを採用させることにどれくらい意欲的になれるかはまだまだ未知数だ。
民主党の菅直人財務大臣兼副総理は、物価下落問題によりしっかり取りくむよう、日本銀行に公の場で促したことがある。 しかし、彼も中央銀行に対して明確なインフレーション・ターゲットを採用させるという考えを支持するまでには至っていない。実際はといえば、近ごろの彼の日銀に対する態度は軟化している。[4]
日銀の物価安定に対するアプローチは以前に比べれば柔軟になったものの、菅大臣の相手、白川方明日銀総裁は現状を堅持しようと頑なでありつづけている。彼は "現在の金融危機 によって、物価変動にあまりに注目しすぎ、他の経済的要素を無視してしまうことのマイナス面となりかねない部分が示されている。" と言っている。[5]
しかし、目標についての議論の広まりは中央銀行への圧力となるだろうし、日本銀行は少なくとも限定的な政策緩和のようなものを実施しなければならないだろう。それが政府の圧力をかわすためにこれまで用いられてきたようなものだとしてもだ。
このような動きのひとつとして、日銀は先月、銀行が使える3ヶ月の低金利な資金供給を倍額にした。[6] -これは日銀が比較的リスクが少ないと考える政策アプローチだ。しかしながら、アナリストによると、経済はデフレーションにはまってしまっており、ほとんどその効果はないとのことである。
ところが、日銀への政治的な圧力も火曜日に発表されたデータのせいで弱まりかねない。[7] このデータでは原油と原材料の値上がりによって、3月の卸売物価 (年率換算) の下落幅は、2009年1月以降、これまでになく小さくなっているからである。[8]
訳注 1: MP は Member of Parliament の略かと。
訳注 2: 正式名称は「デフレから脱却し景気回復を目指す議員連盟」。原文では "anti-deflation league". 以下、おもに、『金子洋一さんのブログ』から。彼の Twitter アカウントはこちら。
- 田中さんのブログから。「デフレ脱却議連起動す!」 (2010年3月25日、設立準備会、呼びかけ人と事務局名簿。)
- 「デフレ脱却議連、立ち上げました!」 (同上、金子さんによる報告。)
- 「デフレ脱却議連関連のインターネット報道」
- 「デフレ脱却議連第一回会合開催」 (2010年3月30日、設立総会。イェール大の浜田宏一さんのメッセージあり。)
- 「デフレ脱却議連第二回会合!」 (2010年4月6日、with 暗黒卿。)
- 「デフレ脱却議員連盟第三回開催」 (2010年4月13日、勝間さん登場。本稿はこの会合の内容が話題。)
- Zakzak 「【激震2010 民主党政権下の日本】ボーナス・給与、雇用問題…デフレ議連発足は大チャンス」 (2010年4月5日、高橋洋一さんがデフレ脱却議連に言及した記事。短いけどおすすめ。)
訳注 3: 以下に4月13日会合の報道を。
- ロイター 「UPDATE2: デフレ完全脱却に物価目標など大胆な金融政策求める=民主党議連の政権公約要望案」 (2010年4月13日、デフレ脱却議員連盟第三回についての報道。)
- ロイター 「民主・デフレ脱却議連が政権公約で党に提案、財政・金融政策の集中投入を」 (2010年4月15日、提案は14日に提出された。)
訳注 4: 例えばここにある発言。「平成21年11月20日、菅内閣府特命担当大臣記者会見要旨」 (『菅大臣記者会見要旨』から。これが菅さんの"デフレ発言"についての記事のソースでよいのかなと。)
「私たち自身、デフレ状況という認識を私も申し上げているところで、政府としては、内閣としては、やはりこういう状況の中で金融の果たすべき役割も多いわけですから、今日も日銀の政策会議が行われるわけで、津村政務官が出席をすることになっておりますので、そういう政府としての認識は、機会があればというか、多分機会がありますので、きちっと伝えたいと。」
しか~し。菅さんの 4月バージョン ↓
「白川総裁とは政権スタートから私も当初は経済財政担当という立場で、現在はそれに加えて財務大臣という両面で色々意見交換を続けております。そういう意味で私自身は白川総裁、非常によくやっていただいていると。もちろんそれぞれの独立性とかそういうものをお互いが分かった上で、しかし同時に政府と日銀がある意味では一体となって、特にデフレに対する対応をしてきているわけで、そういう点では私は政府と日銀のこの間の対応は非常に共通の目標を持ってそれぞれの立場で努力するということで、かなりいい形で進んでいる、このように思っております。」 (「平成22年4月6日 菅内閣府特命担当大臣記者会見要旨」)
ちなみに11月20日の菅発言に対する白川発言はこのあたりにまとまってます →JBpress 「白川日銀総裁の正論と菅副総理の危機感 -デフレ問題めぐる2人の発言」
訳注 5: ソースとなる白川発言ですが、いかんせん対応する "日銀文学的表現" が不明なので、検索もできないというあり様でして...すまんそん。
訳注 6: 手前みそだけど、これ→ 「気あいを入れずに化粧をかさねる日銀」。追加緩和と称される "新型オペ" のより詳しい内容については、「日銀が新型オペ拡充」 を参照。ドラめもんさんの辛辣な文体好きなら「「ドラめもんアーカイブ 2010年03月」を "新型オペ" で Google 検索したキャッシュ(色がつくので便利)」。
訳注 7: これのことかな→日銀「企業物価指数」 (2010年4月13日発表、2010年3月分)
訳注 8: この最後の部分、night_in_tunisia さんは以下のようにコメントしています。
イギリスが使っている消費者物価指数 (CPI) の入口は、「Difference Between RPI, RPIX and CPI」。イギリスの消費者物価指数についてのしおりは 「Consumer Price Indices A brief guide」 (PDF直、1.3M、26頁)。←読まなきゃと思いつつまだ読んでない。イギリスの CPI 関連は Office for National Statictics のサイトにある 「Consumer Price Indices」からどぞ。