20100324

抜粋: ガイルズ・ウィルケス: 『Credit where it's due: 量的緩和を実体経済のために』

Giles Wilkes 『Credit where it's due: Making QE work for the real economy』(2010年 3月、CentreForum 96 頁、2.2M) から 「Executive Summary」のみ。

題名のとおり "量的緩和政策を改善しようぜ" という提案。要約しか読んでませんが、第三者による「まとめ」になっていて、ガイルズさんたちの提案は、「イングランド銀行は名目成長ターゲットを使うべし」と「信用リスクを緩和するために基金をつくりませんか?」 というもの。

イングランド銀行 (BoE) 側による「まとめ」には、金融政策委員会のスペンサー・デールさんの 『QE - ONE YEAR ON 』 (2010年3月12日、16頁、44kb) があります。

イギリスのみなさんは総選挙前なので、今回の危機対策を一旦整理ですな。「よーく考えよー、お金は大事だよー♪」っと。日本のよい子のみなさんはその動きに釣られないようにしましょう (自戒をこめて) 。ま、多くの人がマスメディアにひっぱられると思うので、カウンターが必要でしょうか。

BoE は、つい先日、今年 1冊めの四半期報告 『Bank of England Quarterly Bulletin 2010 Q1』M4 についてのレポートを出版しました。また、それとは別にふたりの副総裁講演も。チャールズ・ビーン副総裁 (通貨政策担当) の 『The UK Economy after the Crisis: Monetary policy when it is not so NICE』 と、ポール・タッカー副総裁 (金融安定担当) の 『Resolution of Large and Complex Financial Institutions』 がそれです。FT にも量的緩和を云々する記事や FSA による規制についての記事が (下記) 。まぁでもやはり、イギリス世間にとっては財政問題がホットなのかしらん。にしても、さっぱり読むのが追いつきません...

おまけの記事リンク:

BoE の量的緩和については → 『"Reasons to be Miserable" UKバージョン』 from FT など。

記事の題についてですが、「Reasons to Be Miserable (His Name is Marvin)」 という歌があるそうです。"Marvin"は、あの 『The Hitchhiker's Guide to the Galaxy』 にでてくる >> 偏執狂のアンドロイド << (←ここ注意) 。えーっとw、マービンといえば BoE のマービン・キング総裁。深読みしすぎですかね? 記事は「Have a good weekend everyone!」で締めくくられてます(笑) ちなみに歌詞はこちら ... "Reasons to be miserable: In my brain a pain, Very little turns me on, Marvin is my name..."。明るい歌...ではないようですw

FSA (金融サービス機構) については → 「FSAの強気なスタンスに City 街はびくびく」『「今は締め上げの時期ではない」 by FSA』 (ともにFTから) など。

今回は 『DeLTA Function』 の にゃんこワンダフルさんに感謝です。まずは原文にある「著者について」から。



著者について

ガイルズ・ウィルケスは CentreForum[1] の主任エコノミスト。2008 年 4 月に金融関係の調査員として当フォーラムに加わった人物だ。著書 『A balancing act: fair solutions to a modern debt crisis』 は "Prospect magazine think tank publication of the year for 2009" を受賞している。他に 『Fiscal Rules OK?』 (Alasdair Murray との共著) や 『Divided we fall: can the G20 save globalisation?』 (John Springford との共著) などの著作がある。

オックスフォード大学出身。1994 年に経済哲学 (Philosophy and Economics) を修了し、ロンドン・ビジネス・スクール[2] 在学中に MBA を取得、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス[3] で 世界史[4] の修士号を得た。この間、出版社に勤務した経験もあり、IG Group (spread-betting and derivatives company) のディーラやマネージャとしても 10 年の経歴を持つ。

訳注 1: CentreForum のサイトはこちら。Centre と Forum のあいだにスペースは入りません。爽やかガイルズくんは「Freethinking Economist」 というブログ (毎日更新) を書いている。

訳注 2: London Business School、ロンドン大学のカレッジのひとつ。MBA 関連コースの評価が高いとか。

訳注 3: LSE、London School of Economics、こちらもロンドン大学のカレッジ。ロンドン大学はカレッジが複数あって、それぞれ結構独立している。"ロンドン大学連合" という訳もあるみたい。そのほうがあってる気がします。

訳注 4: Global History。


参考に目次を。

Credit where it's due: Making QE work for the real economy

Contents

  • Executive summary
  • 1. How we got here: from inflation busting to quantitative easing
  • 2. Has QE worked?
  • 3. Other effects of QE beyond boosting spending
  • 4. Is QE dangerous?
  • 5. Making QE work better through `fiscal dominance'
  • 6. Conclusion
  • Appendix 1: insufficient demand, and its causes
  • Appendix 2: changing your mind about how it works
  • Appendix 3: assessing distributional consequences of asset growth
  • Appendix 4: auction prices for the same gilts before and after QE
  • Appendix 5: has the Bank given too much to the market?
  • Notes

Credit where it's due: 量的緩和を実体経済のために


本稿の要旨

「Quantitative easing (量的緩和、QE)」は、政策金利がゼロになった時、景気回復のためにイングランド銀行が採用した政策である。世の中に流通しているお金を増やして消費を促進するため、これまでに 2000 億ポンド[1] の銀行準備が新たに用意されてきた。これにより、イングランド銀行のバランスシートは住宅金融組合程度から数千億ポンド規模にまで拡大をつづけてきた[2] 。今日、わが国でもっとも重要な投資家はスレッド・ニードルの公務員なのである。[3]

このように膨大なお金を投入したにも関わらず、2009 年の実体経済[4] は急激な景気悪化に見舞われた。その激しさは政府が 2009 年度予算で見込んでいたものの 100 % 以上に達したのである。フランス経済とドイツ経済は (量的緩和なしで) 成長に転じたが、イギリスの景気悪化はさらに半年間も続いている。イングランド銀行による融資は経済回復に失敗し、ブロード・マネー [5] の伸びも目立つほどではない。量的緩和の効果がもっとも小さかったのは、イングランド銀行が影響を与えようとした分野、すなわち通貨供給量の増加であり、支出の増加であったのだ。

イングランド銀行のマービン・キング総裁によれば、量的緩和は従来の金融政策の「延長線上にある」とのことだ。ところが、量的緩和は支出にあまり影響しなかったにもかかわらず、従来の金融政策の延長とはとても思えないほどの副作用があった。政策がスタートしてから 9 ヶ月になるが、この間にイギリス政府が売った英国債は年額で史上最多にのぼっている - しかも政府は比較的小さい借入れコストで国債を売ることができた。その結果、資産価格が尋常でないレベルまで反発している。住宅価格がふたたび上昇しはじめ、株価も 50% 以上の値上がりだ。投資銀行 [5] にとっては豊年となり、あたかも危機がおきなかったかのように多額のボーナスが支払われている。

経済成長への影響がみられないとなれば、量的緩和の副作用が現実問題として取りあげられるだろう。そうなれば、金利の決定とは違って政治家もこれを無視できなくなる。中でも問題なのは、量的緩和によって財政政策と通貨政策の境目がよくわからなくなってしまう点だろう。緊急に支出が求められていた時、政府が安上がりに借金できたのは事実として喜ぶべきことだ。けれど今度は、イギリス大蔵省が財政の健全性を中央銀行に左右されるようになり、困った立場に立たされてしまっている。つまるところ、中央銀行と大蔵省がこのような関係にあると、両者の施策上の独立性が脅かされてしまうということだ。

一連の量的緩和政策は受益者への配分もゆがめてしまっている。量的緩和は多くの大企業や金融業に恩恵をもたらしてきた。社債を発行して資金調達するのは以前よりずっと楽になっている。大企業などによる大口の資金調達[6] は楽になって資産価格もうなぎ昇り、ロンドンの金融街は大もうけである。資産をたくさん持っている人たちにとって 2009 年はよい年だった。典型的な株のポートフォリオ[7] やロンドンの住宅価格は、ほぼリーマン・ショック以前の水準にもどっている。その一方、ほとんどの一般家庭や零細企業にとって、量的緩和で好転したなにかはまだ目に見えてこない。彼らこそ借りられるお金が少しでもないものかと目を皿のようにしている人々だ。そしてそれは、個人や中小企業向けの銀行[8] がいまだに弱気で融資を渋っているからなのだ。

さまざまな意味で、量的緩和は金融業界と富裕層に多額の補助金をわたすようにはたらいてきた。けれど、それと銀行の救済とは別問題。銀行の救済だったなら会計監査というしくみが使えるからだ。量的緩和によるお金の行く先の大部分は不透明で、誰がその恩恵を受けたのかよくわからず、納税者はほとんど蚊帳の外だった。わが国の金融政策当局は、おそらくそれを国家経済を救う唯一の道だと信じ、所得格差が広がってしまうような"力"を使って経済のある部分をえこひいきしているのだろう。しかしながら、彼らのこの姿勢がそもそも議論すべきもので、その議論の結果、副作用による損害が軽くなるとしたらどうであろうか[9] 。

わが国には、このような副作用のある試みにあまり頼らずとも、不況から力強く抜けだしていく可能性がある。ところが、経済の先ゆきがあやしいままなリスクも、それどころか景気が後もどりするリスクさえかなりの程度で存在している。財源は限界にきている。2008 年とはちがって、イギリス政府はこのさき 2、3 年は予算を引き締めるだろう。

イギリス経済はふらふらと後退していく運命なのだろうか。量的緩和が金融街に活をいれるだけでなく、経済全体を効果的に刺激できるかどうかがその鍵になる。では、現時点でのわれわれのアドバイスを以下に記すことにしよう。

  • : 不況のあいだ、イングランド銀行は名目成長 (率) を目標としてはっきり示すべきだ。現在、イングランド銀行は目標をインフレーションにしぼっている[10] 。しかしこのままでは、まだ効果の出ないうちに量的緩和が引っこめられるのではないかという市場の危惧を完全には振りはらえない。市場がそう予想していると、量的緩和政策はひどく弱体化してしまう。イングランド銀行が目標として高い名目成長率をきっぱりと口にすれば、人々は投資家が安心するまで (ひいては彼らが活気づくまで) 流動性[11] が維持されると信じてくれるのではないだろうか。

  • : 低インフレの不況だと、通貨政策と財政政策は力をあわせなければ効果を発揮できない。これはイギリス大蔵省が量的緩和を「信用緩和」[12] に変換するということだ。量的緩和に使われる資金の一部を使って、新しく「信用リスク基金」を設けるべきだろう。金融市場で問題がおきた際、必要な資金をすばやくそこに向かわせ、より早く需要が改善するようにしておくのである。

  • : 信用収縮[13] に苦しみ続けている分野は多い。「信用リスク」基金があれば、彼らへの資金源として有効に使えるはずだ。借入れ保証制度[14] はすでに成功をおさめているし、零細企業への融資につかう基金としてもよい。アメリカで論じられている社会基盤整備銀行[15] のようにしてもよいだろうし、銀行部門への追加資本注入に利用してもよいのだ。

訳注 1: 25兆円超くらい。

訳注 2: ググれば出てくるだろうけど DeLTA Function にグラフがある。「円高とデフレ、あるいは某中央銀行のサボタージュ」や「日米英の"銀行券ルール」参照。

訳注 3: スレッド・ニードル(街) はイングランド銀行がある通りの名前。Google Map で行ってみる?

訳注 4: real economy。「実体経済」は経済のモノやサービスの生産に関わる部分、かな? この文脈では経済の "金融" とは別の部分というくらいの意味でしょう、たぶん。

訳注 5: M4 のこと。『Measures of M4 and M4 lending excluding intermediate other financial corporations』 (PDF直リンク) をみると、2007年9月以降、BoE は M4 をブロードマネーとして扱っています。以下がイングランド銀行のサイトにある説明。引用元は「Monetary & Financial Statistics Brief Background to Tables」。より詳しくは、「Monetary & Financial Statistics Explanatory Notes」以下の M0M3M4 を参照。

  • Notes and coin (Table A1.1.1) is the UK丕サs narrow monetary aggregate, intended to capture money held for transactions rather than as wealth. The level of notes and coin in circulation is likely to be related to economic transactions such as retail sales.

    表「紙幣と硬貨」はイギリスの狭義の通貨総量 (ナロー・マネー) で、財産としてのものではなく、取引や決済に使われる通貨だけを把握しようとするためのものである。

  • M4 (Tables A2 to A4) is the UK's main broad monetary aggregate; M4 is held not only for transactions purposes but also as a form of wealth.

    Measures of M4 and M4 lending excluding intermediate other financial corporations are published in Table A2.2.3. These provide economically more relevant estimates of broad money and credit than M4 and M4 lending based on their traditional definitions. An article in this publication (http://www.bankofengland.co.uk/statistics/ms/articles/art1may09.pdf) sets out the background.

    M4 はイギリスの広義の通貨総量 (ブロード・マネー) の中心的なものである。M4 では取引・決済手段としての通貨だけでなく、財産としてのものも含まれる。

    M4 と"その他金融関連企業"をのぞいた M4 lending を表 A2.2.3. に示した。これらの数字をつかって広義の通貨総量と信用量を評価すれば、従来の定義からの M4 と M4 lending よりも、経済学的に意味のあるものを得られる。われわれが出版した『Measures of M4 and M4 lending excluding intermediate other financial corporations』 (PDF直リンク、以下に抜粋して翻訳) は、その背景について明らかにしている。

Measures of M4 and M4 lending excluding intermediate other financial corporations

By Norbert Janssen

はじめに

2007 年 9月、イングランド銀行は国内のブロード・マネー (広義の通貨総量) の計測法の変更について一般から意見を募った。これは、イングランド銀行がもちいるブロード・マネーの計測法を、急速に発達している世界の金融システムにあわせてアップデートするためであった。そこでの主な提案は、"その他金融企業 (OFCs、other financial corporations) " などが保有する「通貨」をブロード・マネー (M4) から除外することだった。これによって、名目支出により密接なかたちで「通貨」 (の総量) を計れるようになると予想された。本稿は一般公募後の進捗状況を報告するものである。"その他金融企業" による預金や彼らへの貸付け/融資を除外した場合、ブロード・マネーと信用をどのように計るか、その内容についてもまとめてある。そして最後に、このデータをより頻繁に発表するために、われわれがどんな作業をすればよいのかについても軽くふれている。

背景

「通貨」という概念は次の 3 つの条件を満たすモノや財産をさしている。まず、会計勘定や銀行口座、商取引の一単位となるものであること、そして価値を保有するものであること。さらにモノやサービスに対する支払い方法であることがその条件だ。わが国のように金融システムが発達している場合には、経済学的に意味のある通貨総量 (通貨供給量/通貨流通量/マネー・サプライ) は次のようにして計らなければなければならない。すなわち、対象を幅広く広汎にとり、国内で流通している紙幣と硬貨をふくみ、同時に銀行[1] や住宅金融組合[2] が保有する預金もふくめねばならないのだ。預金を含めるのは、銀行と住宅金融組合の負債のほとんどが、支払いの手段としても利用されているからだ。上の条件に照らしあわせると、これらの事業体は「通貨」の役割をはたすものをつくりだし、それを取引して金融業 (MFI、monetary financial institutions) を営んでいることになる。しかし、ある MFI から別の MFI への債務はその部門のなかで相殺されてしまうので、MFI どうしの預金はわが国のブロード・マネーには含めない。そのため、ブロード・マネーを計るときに通貨を保有している部門としてあつかうのは、国内に籍のある民間の非 MFI 事業体、例えば一般家庭や民間の非金融関連企業、それと MFI でないという意味での "その他金融企業 (OFC)" などになる。

OFC 部門には異なる経済活動をおこなう様々な企業がたくさんふくまれている。例えば保険会社や年金基金、証券ディーラなどの預金を預かっている企業や団体がある。それらは資産価格に影響を与える事業体にふくめてもよいだろう。これらの企業が一般家計や 他の一般企業とじかにやりとりすることで、名目支出はきまってくるのだ。

OFC には他のタイプのものもある。彼らの仕事は主に銀行と住宅金融組合のあいだの仲介で、 MFI どうしでみられるような取引を効率的に提供している。仲介業務をおこなう OFC には次のようなものがある。セントラル・クリアリング・ハウス[3] - 彼らは証券取引の決済/調整を手伝ってくれる -、証券化のための特別目的事業体[4] 、担保つき債権をあつかう団体 (MFI はこの種の団体を融資の資金源に使っているし、資産やリスクをバランスシートから移転するのにも利用している)[5] が最も一般的だ。

2007 年 9 月の一般公募での案は、仲介業務にたずさわる OFC を通貨保有部門[6] から除外するような提案だった。この案に沿ってブロード・マネーと信用を計れば、より有意義になると思われたからである。しかし、当時のデータには MFI 企業と仲介にたずさわる OFC 事業体の区別がない。そのため、この区分であきらかにできたのはブロード・マネーの概要だけであった。では次節から、2007 年以降、この計算方法がどう変遷してきたのか説明していくことにしよう。

訳注 5-1: イギリスで "bank"といったら何のことか気になって調べてみた。ところが FSA のサイトには "There is no definitions " とあって、"bank" が実際に何をさすのかはよくわからなかった。だから「bank = 銀行」なのかもわからない。つか、日本の「銀行」についても知らないんだけど。

訳注 5-2: building society。

訳注 5-3: Central clearing couterparty。取引の契約期間が長いと、状況の変化しだいで、債務不履行がおきるリスクが大きくなってしまう (例: 先物取引) 。このようなリスクを減らすため、"特定の機関" が全体の取引の損益を計算して、一定の会員のあいだで儲けた人→損した人のように金額の調整がおこなわれている。この「特定機関」がクリアリング・ハウス (たぶん) 。清算機関には種類があって、"Central" がついてるのは "1箇所にまとめて" という方式のことだと思う。日本では日本証券クリアリング機構や東京金融先物取引所、アメリカではシカゴやニューヨークの証券取引所が該当するみたいです。参考: 『クリアリング(清算)制度について』 (PDF直リンク、2003年)。日銀の『決済について』 も参考になります。

訳注 5-4: securitisation special purpose vehicles。英辞郎95には "資産買取り、資金調達証券発行、信用補完、収益配分を行う会社・組合・信託" とあります。

訳注 5-5: covered bond entities。

訳注 5-6: money-holding sector。

続いて、『インフレーション・レポート 2009年5月版』の13頁の Box から。 (←これは「いつか」そのうち...)

......訳注 5 は ここまで。しかし注釈が長いっすね...

訳注 6: wholesale financing。

訳注 7: ポートフォリオ。"The entirety of the financial assets (and usually also liabilities) that an economic agent or group of agents owns." 経済主体やそのグループが保有する金融資産のまとまり (ふつうは債務も含める)。金融資産には株式、社債、預金、現金がふくまれる。『Deardorff's Glossary of International Economics』より。

訳注 8: retail bank。

訳注 9: But if this is their view it should be debated - and damaging side-effects mitigated.

訳注 10: イングランド銀行 (BoE) 謹製の量的緩和政策のパンフレットには日本語訳があります(『イングランド銀行パンフレット「量的緩和とは何か」』、リンクが張れなかった)。現状、BoE は 2% を目安にインフレをコントロールしてる。"インフレの指標" が上下に 1% 以上目標からずれると、BoE 総裁は金融政策委員会 (MPC) 名義で大蔵大臣に「始末書」を書かねばなりません (「始末書」現物はPDFで公開されていて、こういうもの。"Open letter" っていうらしい。最近では 2010 年 2月のがあります。これはキング総裁の任期中で 3 回目で、リンク先の PDF には、その理由や MPC の見とおし、今後の政策についてもちゃんと書いてあります)。彼らが使っている "インフレの指標"(CPI インフレ率) の内容は、このリーフレット 『Consumer Price Indices - A Brief Guide』 (PDF直、1.3M、2004年) や 『The New Inflation Target: the Statistical Perspective』 (2007年) にあるものかと。たぶん後者を参照したほうがよい。

訳注 11: "The capicity to turn assets into cash, or the amount of assets in a portfolio that have that capacity. Cash itself (i.e., money) is the most liquid asset." 資産を現金に交換できるかどうか。もしくはポートフォリオに含まれる資産のうち、現金に換えられる資産の量。現金 (例えば、通貨) が一番流動的な資産。 『Deardorff's Glossary of International Economics』より。

訳注 12: 信用緩和/Credit Easing は、アメリカの連邦準備銀行が採用している政策。ベン・バーナンキ議長の 2009年 1月の講演でふれられた。両者はともに、ゼロ金利な状況でもちいられるが、量的緩和/Quantative Easing とは異なる政策。

僕はまだそこまで詳しく理解していないので、白塚重典 『わが国の量的緩和政策の経験: 中央銀行バランスシートの規模と構成を巡る再検証』 (2009年 1月) の 2ページ目にある注釈を引用してお茶を濁しておきます。

"Bernanke[2009a]は、クレジット市場を支援する Fed のアプローチを、最初に信用緩和と呼び、日本銀行が 2001~06 年にかけて実施した量的緩和政策との概念的な相違を指摘した。Yellen[2009]も、現在の Fed の政策実践と日本銀行の経験を比較すると「相違点が共通点を上回る」とし、Fed がバランスシートの資産サイドに注目し、特定の市場における与信フローを改善させようとしていることを指摘した。このほか、Bean[2009]は、BOE による量的緩和は、主として民間非銀行セクターから資産を買い入れるよう設計されており、日銀による量的緩和政策と異なるとしている。"

上記引用に出てくるバーナンキとビーンの講演は以下。Yellen さんのは白塚さんの参考文献リストには載ってませんでした。バーナンキさんはアメリカ連邦準備制度の議長、ビーンさんはイングランド銀行の副総裁。

訳注 13: 信用収縮...あとでしらべようっと。

訳注 14: loan guarantee schemes. 具体的には、ビジネス・イノベーション省 (Department for Business, Innovation and Skills、BIS) の零細企業支援策

訳注 15: 「National Infrastructure Bank」 たぶんアメリカで提案されている制度のこと。

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