20100207

FT論説 - 量的緩和が中断されたが、英国債市場は冷静なのである。

さて、2 月4~5 3 ~ 4 日、イングランド銀行の金融政策委員会が開かれました。金利はすえ置き、資産買取りプログラム(APF)は一時中断とのこと。ちょっと動きましたね。ニュースリリースはこちら。議事録は 10 日に公表され、イングランド銀行のサイトでダウンロードできるようになるでしょう。インフレーションレポートも10 17 日発表。現地時間 午前 10 時 30 分からオンラインで会見が見られるようです。再び麗しのキングさまの動くお姿に...いや何でもありませんw

この記事の本意は、イギリスで今年行なわれる選挙を見すえて、イングランド銀行をせっつくことであって、量的緩和が駄目だと言っているわけではないことに注意。くれぐれも誤解なきよう。イギリス総選挙に向けての今後の動向から、何らかの教訓が得られるかもしれないですね。原文はこちら

2010年2月10日: 日付の誤りを訂正しました。


量的緩和が中断されたが、英国債市場は冷静なのである。

クリス・ガイルズ、経済部・編集者、4 Feb 2010 8:14pm

木曜日、イングランド銀行は資産買い入れによって通貨を供給する(creating money)プログラムの中断を発表した。しかし、イギリス政府債市場は砂漠のオアシスのような穏やかさを保ったままだ。

2009年3月に始まった量的緩和制度は、300 年のイングランド銀行史上はじめての試みで、マネーの量を増やして国内の支出が増えるようにし向けるための政策であった。

懸念されていたのは、イングランド銀行が政策金利を 0.5 %に据えおき、マネーの供給を 2000 億ポンドで止めてしまった場合、英国債の利回りへに上昇圧力がかかるのではないかということだった。イングランド銀行はこれまで英国債の最大の買い手だったからである。

しかし、投資家はイングランド銀行の分かりやすい振舞いを読み取っていたし、資産買取りで発生した負債を政府が払い戻す能力も心配してはいなかったということになる。木曜日の英国債 10 年ものの利回りは、発表があった正午過ぎに跳ねあがったが、すぐに下がったのだ。

この日、エコノミストたちは量的緩和が機能していたかどうか議論し続けていた。イングランド銀行の金融政策委員会によると、2000 億ポンドの資産買取りは「しばらくの間、国内経済に金融的刺激を与え続けるのには十分」だろうとのことだ。しかし、量的緩和の効果には具体例が少ないと指摘することもできるだろう。

野村證券のピーター・ウェスタウェイは「量的緩和の導入は(市場の)動向に大きく影響したと思っています。」と述べているが、ファソム・コンサルティングのダニー・ガーベイは「イングランド銀行の量的緩和プログラムによって、何か実質的な変化がおきたことを示す説得力ある証拠はほとんど見つかりませんね。」と主張している。

誰も本当にはっきりしたことは言えない。イングランド銀行が 2009 年 3 月に行動をおこさなかった場合の結末が分からないのは、われわれにとって大問題である。

量的緩和の効果には状況証拠があるものの、効果があると言い切るには証拠がまだまだ足りない。2009 年第 4 四半期、イギリス経済はなんとか景気後退を抜けだし、第 3 四半期には現金支出が 1.1 %上昇してもいる。ともに、不況を阻止して回復を支えるというイングランド銀行の目標をいくぶんは満たすものだ。

この回復が量的緩和のおかげかどうかがはっきりしない。現在、見通しがわずかに上向いているのは、他にたくさんある要素の影響でもあるからだ。経済にはもともと成長する傾向があるし、財政刺激もおこなわれてきた。エネルギー価格は安価で、世界的に見れば資産価格も上昇している。景気見通しの回復にはこれらも影響している。

量的緩和の効果をはかる中間指標には残念な結果に終わっているものもある。一般家計と非金融関連企業の手元にあるマネーの伸び率(平均、年率換算)は、量的緩和後も衰え続け、2009 年 12 月にやっと前年比 1.1 %上向くだけに留まっている。イングランド銀行は量的緩和がなかったなら、その伸び率はもっと小さかった可能性があると指摘する。しかし、そもそも彼らが目指していたのは、この 10 年間の多くの年でみられたような 7 ~ 8 %の伸び率ではなかったか?

社債市場において、イングランド銀行は社債を買い取ってきた。量的緩和の開始とともに、イングランド銀行の買取り要件を満たす証券の利回りが他の証券に比べて下がった。しかしこの効果はやがて弱まってしまった。

政府債市場でも、量的緩和やそれを拡張するような施策が発表されると、政府の借入れコストははっきりと下がった。しかし、2008 年末の金利引き下げに比べればその影響は小さかったし、これまた時とともに減衰してしまうこととなった。

ひとつ成功したのではないかと思われる印がある。それはイギリスの社債市場で企業が - 事実上、(一般の)銀行を通さずに - より多額の借金をするようになり、昨年に比べて社債市場が流動性を増してきているように見えることだ。

このように量的緩和の効き目は証拠不十分。エコノミストも肩をすくめ、量的緩和には「まぁ害はなかったみたいだね」と言っている。しかし、イギリスがジンバブエのようなハイパーインフレに見舞われることはなかったし、経済も今のところは回復しているように見える。

このように、量的緩和について確信のあることを言えないのが問題だ。これから、政治家が財政赤字削減の適切なペースを論ずることになるだろう(訳注: イギリスでは 2010 年前半に総選挙が行なわれる)。その際の討論を有意義にしたければ、金融政策が財政引き締めをうまく相殺できるということを政治家に理解させておく必要がある。イングランド銀行がまだそれを保証できないでいるのは問題として残っているということだ。

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