イギリスでインフレ率が上がってきました。ハイパーインフレになるんですかねw この記事は、そういう人たちへの苦言でありクギを刺すような内容です。
文中に登場するキング総裁の言葉、「ディスコ...云々」は「Speech by the Governor, Mervyn King(To the University of Exeter Business Leaders’Forum)」(PDF直リンク)に納められています。僕は未読。
原文はこちら。
FT論説 - イギリスのインフレ警報に騙されてはいけない。
Published January20 2010 20:16 | Last updated January20 2010 20:16
イギリスのインフレ率が予想よりずっと早く上昇してきている。消費者物価指数(前年比)は 11月の 1.9% から 12月の 2.9% へと跳ねあがった。神経質な人たちが騒いでいるが、インフレが制御不能になるという懸念にはほぼ根拠がない。イギリス経済にとっては、依然デフレと低成長のほうがずっと危険なのである。
いくぶんのインフレ率上昇は多くの人が予想していたことでもある。政府のインフレ指標は物価水準が前年からどれくらい変化したかを調べている。つまり、一年前に物価がどれくらいだったかを見て、それを今の物価と比べるわけだ。最新の数字がこのように大きく出たのは、2008年12月の特殊な状況にその多くを負っている。2008年12月の物価は、付加価値税率引き下げ・小売り業の必死の値下げ・原油価格暴落で低下していたのだ。
これらすべての揺りもどしが今きていると考えてよい。加えて、劇的なポンド安も小売価格低下の追い風になっている。今週イングランド銀行のマービン・キング総裁が講演をおこなったが、彼もこの数字を重く見てはいない。総裁はご自分の言葉を引用してこうおっしゃっている。マクロ経済データは「時代遅れのディスコダンス - 意外な向きに急に動いたほうが人を興奮させられるもの。五月蠅い騒音のおまけつき。」のようであると。
今回はディスコのビート音が特に大きくなっているのかもしれない。2.9% という数字はエコノミストが予想していた 2.6% より随分大きい数字なのだ。キング総裁の喩えがうまいかどうか判断は読者にまかせよう。しかしとにかく、彼のメッセージ全般 - あなたがお立ち台の上にいようが下にいようが - とにかく落ち着くように、というメッセージはまったく正しいのである。
物価上昇圧力が賃金に飛び火しないかぎり、やがて一時的な要素が除かれインフレ率は再びゆっくりと下がっていくだろう。本当の懸念はインフレ率が上がってこないことのほうなのだ。これはすなわち、イギリス経済にデフレ圧力が居すわってしまうことを意味するのだから。
キング総裁が指摘したように、危機がおきなければイギリスの国家収入は今より 10% 増えていたはずだ。一部は永久に失われてしまったかもしれないが、国内生産能力にはまだかなりの余裕があるのである。火曜(訳注: 2010年1月19日)発表の雇用統計は失業率の低下を示している。しかし、それとてこの見方を変えるようなものではない。その統計では被雇用者数も同時に減っているからだ。つまり、労働者は職を得て失業状態から抜けだしたわけではなく、労働力が活用されることなくすっかり放置されたままになっているということである。そしてそのような状況にもかかわらず、半年経っても職を探しつづけている人々の数はまだ増え続けている。
このような状況で、インフレを危惧するあまり、積極的な金融政策の足をひっぱるようなことは断じてしてはならない。英国債買い入れによる「量的緩和」を含め、イングランド銀行による緩和的な政策は今もまだ適切である。物価連動債と名目債の利回り格差をみると、市場は今後10年の小売価格のインフレ率を平均 3% と考えている。これまでの英国小売物価指数(RPI、訳注)を調べると RPI は CPI より 0.66% 大きい。したがって、市場の期待インフレ率はイングランド銀行のインフレ目標、CPI 成長で 2% という値に近いのである。
訳注: イギリスの消費者物価指数には CPI と RPI のふたつがある。バスケットの中味・重みづけ・対象人数・計算式などが違う。CPI は国民所得勘定から計算し RPI は数千戸の追跡データを使う。そして CPI の値は常に RPI より低く出る。国際基準に沿っているのは CPI のほう。その違いについてはイギリス統計局の「Consumer Price Indices - A Brief Guide」ページにある「Consumer Price Indices - A brief guide」というブックレット参照(24頁)。
実際、イングランド銀行の現状の計画からは量的緩和の終わりが間近であることが読みとれる。彼らが購入できる英国債の上限は2000億ポンド。その上限まであと50億ポンドしか残っていない。再度量的緩和にとり組むことを考えれば、今インフレのデマに騙されてイングランド銀行の足をひっぱるべきではない。
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