Twitter で hicksian さんが「Great Moderation、まだまだ続いてます(今後も継続しそうだよ)」とつぶやいていた。Great Moderation ってナニ? と思ったので、紹介されていた Vox の論文をチラ見してみた...
ボラティリティ? (調べる) ほーほー。Great Moderation? (また調べる) ははぁ...(笑)。グーグル先生にお伺いを立てると"The Great Moderation" は「大平穏(期)・超安定化・大いなる安定・マクロ経済の安定(Great Moderation)・大安定(化の時代)...」と訳されている。僕は「マクロ経済の安定(Great Moderation)」が親切だと思うけど、night_in_tunisia さんは「今のところ大安定期がしっくりくる」と言っている。ちなみに日銀は「大いなる安定」を使っている。皆さんはいかがでしょうか。
イメージとしては海の「大凪(おおなぎ)」がぴったり来るんだけどなぁ。あとは「間氷期」とか。もし、あなたのところに翻訳の神様が降臨してひらめいたら、こっそり教えてくださいませ。
原文は「Does the Great Recession really mean the end of the Great Moderation?」です。
今回の金融危機で Great Moderation が終わったというのは本当なんだろうか?
Olivier Coibion Yuriy Gorodnichenko
16 January2010
はたして Great Moderation は「たまたまおきたこと」だったのかな? いやいや、金融政策がうまくインフレを手なずけたんだよ、僕らはこのコラムでそう主張するつもりだ。現在の景気後退が歴史的にみてもひどいのははっきりしてる。でも、ボラティリティは 1970 年代のレベルにはもどらない感じだ。以下ではそれについても述べていこうと思う。
「Great Moderation の原因についてはっきり知っている人はどこにもいない。金融市場がより洗練されてきたからだと言う人もいれば、FRB の叡智うんぬん...と言う者もいる。しかしだね、それがたまたまだったってことは分かってるんじゃないかね?」-ロバート・ライシュ、2008年7月15日。
Great Moderation は終わったのか?
戦後最悪の不況が目前にせまってきた時、たくさんの人が Great Resession が Great Moderation に終止符をうつぞと騒ぐようになった。Great Moderation の研究者は「たまたまだったなw」とか「グッド・ラックwww」などと嘲笑された。(訳注: 後述のように Great Moderation の原因には「たまたま運がよかっただけ」説と「よくできた政策のおかげ」説がある。で、ここでは、運がよかった="good luck" にかけて嗤っているわけです。後ろのやつは「あーあ、君これからどうすんのよ?」的に。)
Great Moderation は、とくに「よくできた政策」説をこきおろすことで劇的な終わりを迎えたようにみえる。「よくできた政策」説というのは、ポール・ヴォルカー元FRB議長の姿勢 - インフレには積極的な金融政策で対応し、インフレをおこしそうなイベントに厳しく対処したりインフレ率をしっかりコントロールしたりする - をベースに Great Moderation の原因を説明するお話だ。 (Clarida, Gali, and Gertler 2000, Boivin and Giannoni 2006, Lubik and Schorfheide 2004, and Coibion and Gorodnichenko 2009)
「今の金融政策だって上のヴォルカーの態度とそんなに変わらないんですがなにか?」
僕らが Great Moderation の終わりを主張する人に言いたいのはそういうことだ。
それはとっても誇張されているのデス(A greatly exaggerated death)
僕らが思うに、今の不況は Great Moderation の終わりなんかじゃない。たしかに景気後退はとても厳しいけれど、ボラティリティは 1970 年代に比べればかわいいもんだ。ということで図1。図1 は実質GDP成長率(四半期)を年率換算してその標準偏差をプロットしたもの。上のグラフで使ったのはこれまでの研究にあった値の5年平均、下は同じものの幾何平均に脚注のように重みづけしてある。
1990 年代のボラティリティが 1970 年代の半分くらいになっているのがはっきりわかる。これが Great Moderation。5年平均グラフ(上)にあるボラティリティの跳ねあがりは、Great Moderation 期におきた景気後退だ。今回の景気後退によるボラティリティ上昇が他より大きいのもわかるでしょう。とはいえ、現在のボラティリティもマクロ経済評論家やフィラデルフィア連銀のようなプロの予測値(2009年 12月)も 1970 年代のまだずっと下なんだけどね。
幾何平均に重みづけしたグラフ(下)をみると、ボラティリティがそのピークを過ぎたことがよーくわかる。僕らが使った重みづけは時間的に離れた期間の影響を軽くするようなもので、2009 年のボラティリティのピークがよりはっきりわかる。さらにさらに、プロの予想屋さんたちの最悪の予測でさえ、1970 年代のボラティリティに比べればずっと小さいのもよーくわかるんじゃないでしょうか。
図1. 実質GDP成長率の標準偏差(上: 重みづけなし、下: 重みづけあり)
Great Moderation の原因には「たまたま運がよかっただけ」説と「よくできた政策のおかげ」説がある。どちらも景気後退がおきないだろうなんてことはほのめかしもしてないし、それがひどい景気後退になるかもしれないなんてこともまったく言ってない。アメリカ経済は 1980 年代からつい最近まで安定していたけれど、今後はどうなんだろうか? 意外なことに、ふたつの説が描くアメリカ経済の将来はまったく違っている。「たまたま」説によると、このさきも安定するなんて可能性はほとんどない、運はつきちゃったから。逆に、「よくできた政策」説は著しく大きいボラティリティなどあり得ないと言っている。というのも、マクロ経済学者や為政者には 1970 年代の有用な教訓があるから。彼らは経済を安定させる方法についてそこから学べるというわけだ。図1 は「よくできた政策」説を裏づけているようにみえる。今回の景気後退は歴史的惨事ではあるけれど、だからといって 1970 年代のようなボラティリティが戻ってくる感じではない。今回の事件も、せいぜい穏やかな時代に嵐が激しく荒れ狂ったくらいのものだろう。
脚注
1 僕らがやった幾何平均の重みづけというのは次のようなものだ。現在値の重みづけを1とする。その前の期間 t-1 にはδの重みをつけ、そのまた前の期間 t-2 にはδ2 とやっていって、δt-19まで。δは 0.9 とした。このδ値は、短期ノイズが最少になる値と時間的に離れたデータの down weghting を均衡させるような値になっている。
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